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寅壱 | Toraichi Concept

The Recommendation from 寅壱 #7 “漢 a.k.a. GAMI(9SARI GROUP)”

Collaboration, Column, News

2021年4月13日に、寅壱と9SARIグループのコラボレーションアイテムが発売される。既に発売されている「TOBI HEAVY SHIRTS 4441-711 BK」、そして今後発売予定の「ARMY VEST 4441-715 OD」だ。

9SARI TOBI HEAVY SHIRTS 4441-731 BLACK
9SARI ARMY VEST 4441-730 OLIVE DRAB


そのコラボアイテムの発売を記念して、9SARIグループのMC 漢 a.k.a. GAMIに寅壱 Archivesのプロデューサーである、村上氏がインタビューを実施した。

村上:(以下 寅):お忙しい中お時間いただきありがとうございます。今回は近々発表のある、9SARI と 寅壱 のコラボレーションの企画もあって、それを記念してインタビューさせていただきます。よろしくお願いいたします。

漢 a.k.a. GAMI氏:(以下 漢):よろしくお願いします。

寅:実は僕自身、かなり漢さんのファンでして今回こうしてインタビューができるのは楽しみにしていました。漢さんの音楽は僕が高校生の頃(2000年代)ですかね、それまでUSのヒップホップは聴いていたんですけど、日本語ラップとの出会いは漢さんの音楽で。日本にもこんなにアツいのがあるんだというのが最初の印象でした。

漢:ありがとうございます。

寅:9SARIと寅壱の繋がりは今度リリースするコラボが初めてではあるんですけど、2018年の時の西日本豪雨の時に倉敷の方に物資の支援があって、その時に9SARIから物資が届いていたんです。個人的に親近感が湧きまして。その時の経緯など、もしあれば教えていただけますか?

小林:(以下K)その時はもともとDJ BAKUから、「自分のツレの岡山在住の元エイジアの従業員からのお願いで、漢を岡山にブッキングできないか?」という相談があって、じゃ行こうってなったんだけど、行く前に豪雨になってしまい、その後のBAKUの支援をしようっていう呼びかけに答えた感じだったんだ。

漢:そう。元々はイベントに行く予定だった。

寅:そういうことだったんですね。やっぱり自分は倉敷在住なので嬉しかったです。ちなみに漢さんはそれ以前にも何度か岡山にいらっしゃってましたか?

漢:それこそ毎年何回も行ってたなぁ。

寅:何度かチャンスは逃してしまっていて。すいません笑
いちリスナーからのお話になってしまってるんですが、漢さんはアーティストとしてのスタンスが「リアル至上主義である」というところが顕著で、自分はそこにに惹かれているんですね。で、最近のアーティストは「ファッション性」とか、「自分の弱さ」なんかもいい意味でも露骨に表現しているというか、それを「エモい」とでも言うんでしょうか。ここら辺は漢さんからみてどのようにお感じですか?

漢:多種多様っていうか、そういう意味では昔に自分が思い描いていたヒップホップシーンが出来上がってきてるなって感じてるかな。ま、いろんな奴がいて、いろんな表現をする奴がいて、で、まぁこれは「いい意味」でしかないないというのが率直な感想かな。

寅:どんなライフスタイルなり、それに対して向き合っていれば「それってリアルだろ?」ってことなんでしょうか。

漢:そうだね、例えば大学生だったり、そこにもいろんなそれぞれのリアルがあるし、そういうことを表現していいんだ…ってことに気づいるんだろうね。あと、そういう表現がたやすく出来る手段がってことが溢れているってことや、手に届くいろんな教科書がある…って言うのかな。そんな環境だから、若い子たちはどんどん上手くなっていくよね。というかスタートから上手いし、耳障りもすごくいいのも多いし、音楽性もどんどん高まってるっていうのかな?こういう状況は素晴らしいよね。

寅:漢さんがヒップホップを始められたのは90年代で、当時の思い出に残るエピソードとかってありますか?

漢:エピソードっていうか、今の若い子達なんかももしかしたらそうなんかもしれないけど、当たり前にみんながヒップホップを経験するような感じの中で、当時の自分たちは若かったし「手段」ってやつを知らなくって、しかも不器用だったりするからね。そんな自分らが前例のないことやってたんで。ただアメリカや世界のヒップホップを見て、(日本人の)共通の部分を探すってのかな。「こういう奴がヒップホップやっていいんでしょ?」っていうのにたどり着いたのかな。当時は。

寅:まさに手探りだったんでしょうね。

漢:基本、何の後ろだても、ケツ持ちもなくやってく中で、「楽しんでこなす」のが当時で、いろんな一つづつのアクションが良くも悪くもヒリヒリしてたな。みんながバシバシに意識しあってたんで、それで地方なんかいくと、例えば岡山なんか岡山市と津山みたいな関係とか、いろんな色がある全国を周ってく中では「試されてる感」はすごかったな。今の時代なんかSNSなんかあるし、最初っから仲良いってのは大きな違いかな。横のつながりってとこだと。

寅:確かに。

漢:90年代とか2000年代初頭のヒップホップやってた人たちは不器用なのかプライドが高いのかわからないけど、フィジカルな出来事が多かったんだ。何だったんだろうな?アレは 笑、みたいな。

寅:笑

漢:今思うとホントなんだったんだろうな 笑  だからクラブなんか行っても今は安全な場所になっちゃってるけど、当時はクラブ遊びに行くにしても、歌いに行くにしても、当時はワケのわかんない気合が必要だった時代だったんだろうなぁ。今はこう、時代背景も育ちも自分らと違ったりして、これがプラスに働いてると思ってる。始まって、カタチになるスピードが全然違うのが今じゃないかな。

寅:情報の共有スピードが今と昔じゃ、ぜんぜん違いますもんね。

漢:後は、圧倒的に当時の連中の時代は不器用だったのに対して今の子達は曲作るのが早くなってきてるんで、どんどん情報を更新していくし、その辺は(スピード感があるというのは)いいこと。昔のヒップホップは不器用で(自分の年齢よりも)7つくらい下までが不器用世代って言っていいんだろうな。

寅:不器用世代ですか。

漢:そっから今の時代はホントに変わったから。自分のエピソードってのは不器用なエピソードばっかだな。ただそこには、自分の意思表示だったり、プライドもあったりするから。

寅:一度ぶつかり合ってわかりあうみたいな。

漢:そうそう。

寅:僕の中で、個人的な話になるんですが、漢さんのファーストアルバム「導(みちしるべ)」にかなりくらって、なんか最初はそれこそこのアルバムに出会うまで、日本語ラップに対して疑問なんか持っていたんですよね。ギャングとかってアメリカのカルチャーであって、日本にはないので「リアルじゃない」って、反抗心もあってUSばかり聞いていたんですけど、「いや待て、こんなのあるんだ?」というのが当時の自分でして。なんかその、まだ語られていない部分なんかあればぜひ聞きたいです。

漢:それこそ、スタイルは結構違ってるんだけど、今の「舐達磨」なんかは、ある種「よりもっとこういう話を描いてやろう」とか「よりもっと過激なこと言えばいいんだろう」ってなところもあって、その辺のバランスはあいつら絶妙なんだよね。だけど当時の俺はそこだけだったと言うか「過激なこと言えばいいんでしょ?」「みんながやってないこと言えばいいんでしょ?」の一点張りだったからなぁ。

寅:なるほど。

漢:ただ、テーマとしては例えば「こんなビート聞いた時パーティーチューンだよね」とか「このビートってラブソングを歌う時の曲調だよね」とかいうのを関係なく、ファーストアルバムには音を集めた。それらには、全部「ストリート」ってのをテーマにしていたかな。

寅:それは興味深いです。

漢:あと、俺のアルバムの作り方が基本的にはなんかこう、不穏だったり、ちょっといかつかったり、暗さも出していって。あとから爽やかっていうのか、穏やかになるっていうのか。次にそこら辺をビートでメリハリをつけるってのがやり方なんだけど、でもこれはみんなが思うパーティーチューンじゃないよ…っていう。まぁ頑張ったって言えば頑張ったかな。特に初めて作るもんだしね。あと当時スタジオ代とか半端ないんで、スタジオ代一時間1万円、エンジニア代1時間1万円、合計1時間あたり2万円かかるんで、そこにいろんな緊張感があったりしたんで、結果的に現場では、研ぎ澄まされたって感じかな。
寅:リアルストーリーのみを追求されてるっていうところだと思うんですけど、曲を描く時に、外的なインスピレーション受けることとかだったりはあるんでしょうか?

漢:いや、自分はそういうのはないかな。めんどくさがり屋だから、パッと浮かんだものをメモる習慣もあんま無いし、書くぞ…ってなったら書くって言うか。人によってはコンセプト決めてから取り掛かる、例えばの曲はこういうコンセプトで書くってガッチリ決める人は多いんだけど、自分はあんまそういうの浮かばないから、フレーズが自然に浮かんだら走らせるって感じかな。書き方としては。

寅:トラックを選ばれる時は好みとしてはどんなところでしょうか?

漢:好みとしてはわかんないんだけど、別に俺が依頼したからって俺のイメージに合わせて作って欲しく無いって言うか。好みと違うところから挑戦したいなというのは常にあるかな。

寅:出来たモノに対して向き合うっていうことですよね?

漢:そうだね。

寅:個人的にはジャジーなものにラップを乗せる漢さんのラップは好きなんですよね。

漢:やっぱ自分らはそれこそ、その時代の人なんでそういうのは好きかな。

寅:漢さんの歌詞は、真面目に向き合うと内容がすごく濃くて、自分に置き換えたり、物事への向き合い方に重ねてしまって、自分のメンタルがポジティブに食らっちゃうというか。例えば「あれ?今自分が逃げてる」とかそういう感覚を感じれるところはすごく衝撃的だったんですよね。自分の人生に対してもリアルじゃなきゃ…みたいな。お聞きしたいんですけど、曲中で過激なことは言ってるんですけど、ダブルミーニングとして捉えていて、奮い立たせられる内容なんかは、特に意識されているんですか?

漢:ま、だからこう、どんな社会にいようが頑張ってことを歌ってる内容が多いから、頑張るっていう方程式とでも言うのかな。人が経験をすることで重なってくれることがあることは多いんじゃないかと思うよ。要は建設業にいようが、デカやっていようが、ヤクザやっていようが、何やっていようが、頑張っている時の心理状態は一緒だと思うんで、そこの内面を歌っていることが多いんで、そういうところで重なってもらえると自分も嬉しいかな。「どんな社会にもこんなやついるよね?」とか、「こういうのが当たり前なんだよ」とか。

寅:なるほど。

漢:時に、自分が書いたリリックを、これでもかってくらい、すごく分析される時もあるからね 笑

寅:ひとつひとつがパンチラインみたいな 笑「自分に自信がない奴はすぐに他人を勘繰る」とか一々自分には刺さります 笑また質問なんですけど、ヒップホップ以外でこれやっていたら?とかってありますか?

漢:ガキの頃は、コックさんかスタントマンになりたかったかな。危険なことも大好きだったし。

寅:今でもカフェでは厨房に立たれていますしね。

漢:まぁね。あ、話を若干戻すんだけど、リリックはどうしても「戦い」の部分とかとかそういう言葉がまず浮かんでくるのが多いかな。ただ、言葉って面白くて「Matador」ってアルバムが音楽的にはすごく自信があったんだけど、リスナーが自分が意図したものとは違う捉え方してくれる時も多々あって。

寅:なるほど。実際にリスナーと話されたんですか?

漢:のちのファンになってくれた子の「泣きました!」って感想を聴くと内容がブッとびすぎてて 笑。自分が理解できない感じで心情を捉えてくれる人もいるし、ラップって言葉がダイレクトだからそこがまた面白いんだなと。

K:だけど当時はすんげぇおっかない奴が出てきたなって思ったよ。まじで怖ぇえっていうか。あんな不穏なビートで。俺たち世代とは全然違うしさ。それまで、キングギドラのファーストアルバムにあるKダブシャインの「スタァ誕生」がリアルストリートって体だったけど、それをしのぐのが出てきちゃったなぁってのが当時のオレの感想。

漢:自分のラップのテーマは、街とか情景が言葉で聞いて目に浮かぶってのがそういうのがラップなんじゃないかなって思ってて。

寅:漢さんは曲とバトルの時の差があまりないなって思っていて、即興でこれが出来るってのがヤバいなって。

漢:曲はそれこそ失敗ができないラインがあるから妥協しない方がいいんだけど、ただ意外と9SARIができてからその考えはフラットにして、それこそD.OとRYKEYと「炎上ボーイズ」ってのもやってみたり、いろんな柔らかさに挑戦してみたりとか。あとは考え込まないでパッパッと書いてみたり、時にはフリースタイルで録ってみたりとか。これらもラッパーのスキルなんかな?って思うんで、いろんなことやってみて、まぁでも、曲によって分けてみてもいいんかなとか。アルバムだったりとかで向き合い方を変えてみるみたいな。

寅:ありがとうございます。最後に、今回コラボするアイテムは、「鳶装束系」をストリートに落とし込んだので、建設業的なテーマが強いんですけど、建設業自体への接点って漢さんはありますか?

漢:あまりないけど、一つ言えるのはそれこそ90年代ヒップホップから今への変化ってのは、チーマー世代からたどっていっても当時のアメカジがメインからエンジニアブーツとかウェスタンブーツにペインターパンツを合わせるところからなんかな。次第にワーク系の要素が結構入ってきたよね。何よりも昔は意外性があったのが今では当たり前になってきたかなって思うよ。

寅:鳶装束についてはどうお考えです?

漢:寅壱ってならではの勝負ができるとこがいいんじゃないかなって思うよ。ドカジャンなんて、たぶんいろいろ計算されつつ、シルエットもいいんで、そういうのを実際見てたら、そこら辺は期待するかな。日本のストリートウェアの日本のバージョンっていう感じで。

寅:なるほど、今の若いラッパーの子や、同年代でもラップで目が出るまで現場入ってたり、いろんな形でヒップホップに携わってる職人さんって多いと思うんですよね。

漢:多いね。自分がまだ本格的に出会ってないだけど、その周りからは結構聞くよ。この前きた(9SARIカフェの)お客さんなんだけど、現場の作業着姿で買い物だけしに来たんだけど「ラッパーです」って言ってたな。自分と年齢あんまり変わらないんだけど、息子が26歳って言ってたし、たぶんすっとヒップホップ好きなんだろうな。

寅:いい話ですね。若い子の中でオン・オフ問わずに、職人として働いていることにこだわりやプライド持っているSNSのポストも見かけます。

漢:そこらへんはZORNの影響もあるかもしれないよね。

寅:今回のコラボで、いろんな職人さんにプロダクトが目につけばいいかなって思っています。実際、今回のコラボ商品を現場でも着てくれたら面白いですよね。今日はありがとうございました。

漢:うん。ありがとうございました。

なお、発売日当日にSNSで発表がある予定のようだ。詳しくはhttps://www.toraichi-archives.com/9sari_collabo/特設ページにて。